誠-巡る時、幕末の鐘-
「今まで黙っていた爺を責めないでくれ」
そう言うと、響は困った表情を浮かべた。
「責めるなんてしません。薄々気付いてましたし」
爺は目を見張った。
「以前、怪我がすぐ治ったことがあったんです。その時から薄々…」
「そう…爺、輝耀は?」
「………輝耀は…もう…」
爺はまたふわりと微笑んだが、同時に深い悲しみが漂っていた。
母親がいるなら一人で江戸から来るはずなんてないのだ。
「……そうか…二人で江戸へ戻れ。元気でな」
「奏様!! 私達と共に参りましょう!!」
爺が奏を呼び止めた。
「私はこれでも仕事中の身だ。主と約束したし」
「今はどちらに?」
「壬生浪士組だ」
「壬生浪!!? そのような下賤なところに!!」
(爺、驚きすぎなんだが?)