誠-巡る時、幕末の鐘-
「俺の方が強いぞ?」
「俺ではなく私。…そのような意味で言っているのではありません!! 自覚をなさってください!!」
爺は的確に言葉を正した。
(そういえば、爺、言葉使いには煩(ウルサ)かったな〜)
「元老院も同じようなところだけど?」
「元老院は院則が徹底しています!! 壬生浪は違います!!」
(爺…顔が怖い。そして声が大きい)
「爺、お…私は結構あそこが気に入っているんだ。そのような言動は控えてもらおう」
「父様、壬生浪士組の方々はみなさん良い方ばかりです!!」
奏と響に迫られた爺は折れるしかなかった。
「…申し訳ありません」
爺は深々と頭を下げた。
「じゃあ、またな。いつか遊びに行こう。響のことはお…私から言っておく」
「奏…」
二人はずっと奏が去るのを見守り、奏の姿が見えなくなると互いに顔を見合せ、頷きあった。
言葉を交わさなくても大丈夫な親子の神秘である。