誠-巡る時、幕末の鐘-
「今日からこの近くに住むことにしたんだと」
(はいーっ!?)
「誰が?」
「私達が……ですよ」
「爺と響が?」
「私と響と奏様が……です」
ニッコリと告げた爺に反して、奏の顔は曇っている。
「断る」
「駄目です」
即答だ。
身も蓋もない話である。
奏がなんと説得しようか考えあぐねていると……。
「それは困るなぁ、旺輝殿」
何故か当たり前のようにさっきの菓子折りを食べているミエの姿があった。
ミエが呼んだ旺輝とは爺の名前だ。
「月影殿、何故です?」
こちらはミエのことだ。
「奏は今、大事な仕事中なんだ」
(どういうことですかぁーっ!? 頭が混乱してきたぞ!?)