誠-巡る時、幕末の鐘-
「ほら、奏。お前も飲め」
「あぁ。ありがとう」
原田は目を細め、奏に酒を勧めた。
(何だ? 驚かれた意味が分からん)
分かってないのは奏一人である。
「奏様、程々になさってくださいよ。響も」
爺は主と娘に注意を促すのを忘れなかった。
「……来たか」
その瞬間、辺りが冷気に包まれた。
「百鬼夜行のお出ましですよ。みなさん」
奏はちょっとお客さんが来ましたよ的な雰囲気で言った。
『……は?』
爺と響以外が声をそろえるのも無理はない話である。
「一言も喋らないでくださいね?」
そう言うと、奏は神経を集中させ始めた。