誠-巡る時、幕末の鐘-
「おい。てめぇらやめろ!!」
「土方さんは黙ってて下さい」
鬼の副長相手でさえ遠慮しない。
「…今すぐそのみっともないもの終わらせないと奏様をお連れして京を出ますよ?」
爺の一言で土方達の動きが止まった。
「何だと?」
「その話はもうついたでしょ? 君の負け」
「そうだそうだ!!」
沖田の言葉に爺は唇を噛んだ。
「負けではない!! 奏様がここにいらっしゃるのは元老院の仕事がある間。ならば私が早々に終わらせます」
その瞬間、沖田達が殺気を出した。
「おい。殺気を飛ばすのやめろ。…それとなぁ、てめぇにも一つ言っておく」
土方は言葉を区切り、再び続けた。
「理由はどうあれ、期限もどうあれ、奏は今、俺達があいつの主から預かってんだ。勝手なことはやめてもらおうか」
土方の口調は穏やかだったが、強い意志が覗いていた。
「確かに…ですが覚えておいて下さい」
爺はそう言うと、随分と先に行っている奏を呼んだ。