誠-巡る時、幕末の鐘-



―――八木邸、縁側




「おい」


「……」


「おい!!」


「……」




うるさいなぁ。




暖かい春の日差しに、ウトウトとなっていた沖田は、声を無視していた。


せっかくの昼寝を邪魔されたくなかったのだ。


沖田に声をかけていた、今や青筋を浮かべている鬼…もとい土方は顔を引きつらせた。


そして深い深い深呼吸をし…




「…総司ぃーっ!!!」




近隣中に響くのではないかと思うぐらいの大声で沖田の名を叫んだ。


明らかに近所迷惑なことだ。




「……何ですか? 朝からそんなに大声出して」




出させたのは沖田である。


だが、扱いに慣れている土方は、深呼吸して再び爆発しそうな怒りを蹴散らした。




「てめぇ、まだ昨日の報告書出してねぇだろうが。早く出しやがれ。…それと奏知らねぇか?」


「奏ちゃんですか? 知りませんよ。どうかしたんですか?」




しれっと自分の話題は隅に流した。


土方はゴソゴソと袖の中を探り、可愛らしい包みにくるまれたお菓子を出した。


とても美味しそうなお菓子で、いい匂いを漂わせている。



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