誠-巡る時、幕末の鐘-
「分かった。信じよう」
少年はホッと溜め息をついた。
「いいのか?」
鷹が心配そうに聞いてきた。
星鈴の独断で決めてしまったのだ。
無理もない。
(私の目に狂いはない。この子の瞳は嘘をついてない。
元々つけない性格なんだろうな)
「あぁ、問題無い。早く連れてけ」
(今か今かと手ぐすね引いて待ちかまえてる御仁もいることだし。
なにより、直々に出て来られたらたまったもんじゃない。
またネチネチとお小言が。あぁ、嫌だ嫌だ)
「分かったよ! ……まったく、俺にまでとばっちりが来たらどうすんだ? ……で……俺の……」
なんか最後らへんブツブツ呟いていたが、星鈴にはよく聞こえなかった。
……というのは嘘で、しっかり聞こえた。
内容はあまり褒められたものではない。
にこりと笑い……そのまま鷹の背中にキレのいい蹴りをいれる。
「いっ……てぇーーっ!」
文句と痛みからの悲鳴と、半々の叫び。
けれど、決してやり返そうとはしない。
鷹も実力差が分からないほど血気にはやる年頃の青年ではないということだ。
口をへの字にして背中をさすりつつ、妖を連れ、元老院へと戻っていった。