誠-巡る時、幕末の鐘-




「おっと。ではニ番目以降のみなさん、また後で」


「だ〜れが二番目以降だ! 俺達も屯所へ帰るんだからついてってやるよ」




(屯所と反対方向を指差してたのは、私だけの目の錯覚か?

私の目がとうとう悪くなったってか)




「いいえ、結構です」


「副長命令だ!」


「職権乱用ですね。嘆かわしい……」




(壬生浪士組副長ともあろう者が……)




「奏ちゃん? 言うこと聞かないと……発句集のこと土方さんに言っちゃうよ?」




ビックゥッ




「な、何のことでしょうか? 身に覚えが「いいの? 君が水を(こぼ)して発句集駄目にしたの、土方さんに言っても」




(あ、あ、あれを見ていたのかー!

そう……あれはつい先日、発句集を読みながらゲラゲラ笑っていたら……。

ほら、よくあるじゃない?

近くに置いておいた湯呑みの水が……ね)



< 188 / 972 >

この作品をシェア

pagetop