誠-巡る時、幕末の鐘-



―――土方の部屋




「ふぅ、いい湯だった。一仕事終えた後の風呂はいい…って、あ…」




奏の髪を乾かす手が止まり固まった。




「どうした?」


「逃がした……」


「逃がしてたな」




次の瞬間、奏はこの世の終わりかというぐらいの顔をしていた。




「見てたなら言えよ!」


「ノコノコ出ていって足手まといになったらいけねぇと思ったんだよ」


「まぁ、栄太が人質になった時はヤバイと思ったけどな」




…最もな解答である。


元老院の者として、人間の、妖に対する心構えとしては満点だ。


花丸もつけよう。




「くーっ! どうする?」


「なぁ、一体どうしたんだよ。最近奏、変だぞ?」




藤堂が奏の顔を覗き込みながら尋ねた。



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