誠-巡る時、幕末の鐘-



「平助! そこにつっこまない!」


「わ、悪ぃ」




奏は藤堂に厳しい目線を向けた。


みんなから藤堂に同情の目線が送られた後、言葉を続けた。




「爺の家から戻ってきた私が見たものは! 開け放たれた私の部屋! 目の前に倒れている新入隊士! ここまでで分かったか!」




ハァ〜〜〜




今までで一番長い溜め息が出た。




『あ、あぁ〜』


「せっかく…せっかく溜め込んでいたのに…」




今までの勢いが嘘のように、ヨロヨロと座りこんだ奏に




「ま、まぁ、そう落ち込むなよ」




と、原田が頭をポンっと叩き慰めた。


その瞬間…




「…決めた。土方さん! 肝試ししましょ、肝試し」




…素早い回復である。


奏は知らない。


土方達の間で、奏が手をつけられなくなった場合の対処を考えていることを。


一にお菓子、ニに頭をポンポンっと叩く、三に響を呼ぶ……である。



< 194 / 972 >

この作品をシェア

pagetop