誠-巡る時、幕末の鐘-
「平助! そこにつっこまない!」
「わ、悪ぃ」
奏は藤堂に厳しい目線を向けた。
みんなから藤堂に同情の目線が送られた後、言葉を続けた。
「爺の家から戻ってきた私が見たものは! 開け放たれた私の部屋! 目の前に倒れている新入隊士! ここまでで分かったか!」
ハァ〜〜〜
今までで一番長い溜め息が出た。
『あ、あぁ〜』
「せっかく…せっかく溜め込んでいたのに…」
今までの勢いが嘘のように、ヨロヨロと座りこんだ奏に
「ま、まぁ、そう落ち込むなよ」
と、原田が頭をポンっと叩き慰めた。
その瞬間…
「…決めた。土方さん! 肝試ししましょ、肝試し」
…素早い回復である。
奏は知らない。
土方達の間で、奏が手をつけられなくなった場合の対処を考えていることを。
一にお菓子、ニに頭をポンポンっと叩く、三に響を呼ぶ……である。