誠-巡る時、幕末の鐘-
「え、あ、えっ!?」
(……なんか、反応が小動物みたいだな)
可愛い。
少女ーー響は先程から慌てふためいている。
(今度は一人百面相。見てるだけで面白くはあるけども)
「間違いではないはずだけど?」
「えっと……はい、そうです」
響は観念したのか、しぶしぶ認めた。
「何故その格好で?」
別に、ここらのものなら男装する必要はない。
それに、忘れてはいまいが、もう夜だ。
女一人では出歩かない刻限のはず。
いや、だからこその男装なのだろう。
見破られてしまってはいかがなものかと思うが、そのまま女物を着てうろつくよりはずっといい。
知りたいのは、男装してまで外を出歩きたかった理由だ。
「……父を、探しに。江戸から」
それから響は黙りこんだ。