誠-巡る時、幕末の鐘-
「今回のことで身を持って分かられたと思うので、何もなかったことにしましょう」
『?』
いつもなら、地獄の一丁目辺りぐらいまで幻覚で見させそうなものである。
…三途の川はもうとっくに越えた。
奏の異様な心の広さに、裏があるのではとみんな勘ぐった。
これくらい許して当然と思えなくなったのは悲しい事実である。
「あぁ。分からなくて結構」
(本人達は十分分かっただろうしね。
何より、人一倍持って帰って来てくれてるからね。
私もそこまで酷くないよ)
真夜中に少人数で、市中に送り出すことは酷くないのだろうか?
「では解散です。昼の巡察がある方は寝ておいた方がいいと思いますよ」
「あ、あぁ。お休み」
「お休みなさい」
本当に何もしなかった奏に、平隊士達は拍子抜けした。
奏の内心はそれどころではなかったのである。
(よっしゃぁ〜! 助かった〜っ!!
何か知んないけど増えてるし…終わり良ければ全て良し、だな)
勝手に自己完結していた。