誠-巡る時、幕末の鐘-
(……まさか)
「一人で、か?」
「…………はい」
長い沈黙の後、響は首を縦に振った。
(ちょっと待て待て。どんな奴?
年頃の娘を一人で京に来させる父親ってのは。
余程の生活能力皆無野郎か、この子が心配になるくらい音信不通だったのか。
いずれにしても)
「呆れた。今のこのご時世にそんな命知らず。……しかも、妖が視えてるときた。術をかけないと大抵視えない連中のはずだけど」
最後の辺りは、響に聞こえるか聞こえないかぐらいの囁き声に。
でも、そこが気になる所だ。
「す、すみません」
(響の背が若干縮まった気がするのは錯覚か?
この分じゃ、妖と男達にとって、お前は色んな意味で格好の獲物にしかならない。
むしろ、ここまでよく無事に来れたものよ)