誠-巡る時、幕末の鐘-

鬼対副官




―――道場




パンパンパン


ガシッ




「ふう。さすが十夜ね。疲れる」


「ですが、僕は翁に許可証を頂いてません」




二人は激しい打ち合いの後、(つば)競り合いになった。




「うん、分かってる。だから私も限定してる」




許可証は元老院の者にとって大事な物、特に第三課の者にとっては。


有るのと無いのとでは力の解放に天と地ほどの差がある。


それゆえに絶対に必要なものなのだ。




「ではあなたもさすがローゼンクロイツ・天宮の一員ですね」


「フフ。私は恵まれているからね」




(主にも、剣術の師にも)




その時、道場内にも関わらず風が起きた。




「そうですね。……星鈴、残念ですが、ここまでですね」


「えぇ」




風の中から、人間には聞き取れない声がしたのだ。



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