誠-巡る時、幕末の鐘-
――早朝、屯所
「……っ! ハァハァハァ。……夢か」
「奏〜? 起きてますか?」
着物の袖をたすき掛けした響が、奏の私室の前で奏に声をかけた。
「……響か。どうした?」
「栄太君が遊ぼうと言ってますよ?」
奏が起きていることを確認し、障子をスッと開けた。
この一連の動作は響だからこそ為せる技であり、他の者がしようものなら……。
すぐに朝に極端に弱い奏に何らかの攻撃を加えられること間違いない。
「……っ! どうしたんです!? 汗びっしょりじゃないですか!」
起きたばかりの奏を見て、響は血相を変えた。
奏は今、夜着も乱れ、長い綺麗な黒髪も汗のせいで体にくっついている。