誠-巡る時、幕末の鐘-
「いや、ちょっと夢見が悪かっただけだから心配ない。……それより栄太は?」
「……今、外で平助君達と遊んでますよ。朝食どうします?」
「いらない。……行ってくる」
なおも心配する響にそう告げ、床を片付け、栄太が待つ外へ向かおうと着替え始めた。
今日は少し肌寒いので、上からもう一枚お気に入りの羽織を羽織った。
「あっ! じゃあおにぎりにしますから待っていて下さい。奏と栄太君がお腹をすかせたら食べられるように」
「あぁ、そうだな」
響の好意を無下にすることはできないし、栄太の分もと言われれば断る理由もなくなった。
奏は響が持ってきてくれるのを庭を見ながら待つことにした。
しばらくすると、綺麗に包まれた弁当包みを持って響が勝手場の方から走ってきた。
「奏、はいどうぞ! 沢庵とかもいれてますから」
「ありがとう。じゃあ行ってくる」
響に礼を言った後、刀を腰に差し、今度こそ屯所を出た。