誠-巡る時、幕末の鐘-
では、どうすればいいか。
……それは黙って見守ること。
俺って今いいこと考えてる!
しかし、そんな永倉の格好いいのか気のせいなのか分からない考えはあっさりと打ち砕かれた。
「なぁ。俺達も様子見に行かねぇか?」
「だけどよ、どこの桜か分かんねぇ〜ぜ?」
軽くうなだれた永倉も、二人がその気なら、と会話に参加した。
「ここいらで桜だろ? 奏が気に入ってるといえば……」
『あそこか! 前みんなで月見ながら酒飲んだ!』
三人の脳裏に以前みんなで行った桜の木が浮かんだ。
奏がその桜を気にかけているのは何度か巡察途中の道で知っていた。
「あぁ、あそこだよ。きっと!」
「よしっ! 行ってみるか。響、土方さんに日暮れまでには帰るって言っといてくんねぇか?」
「分かりました」
どうやら三人は性懲りもなくまた奏の後をつけるらしい。
奏はみんなに愛されてるなぁと自分のことのように喜ぶ響。
強くて美しく、鬼として誇り高い奏は響にとって自慢の存在なのだ。
響の顔に自然と笑みが零れた。