誠-巡る時、幕末の鐘-



「名をつけたらどうだ?」


「名前?」


「あぁ。その猫に栄太が名をつければそこに縁ができる。名は(しゅ)だからな」


「呪?」




栄太は聞き慣れない言葉に首を傾げた。




「あぁ。名をつけ、それを呼ぶことにより相手を縛る」




なんとも物騒な物の言い方である。


子供相手にその説明はないだろう。


その証拠に、栄太は目を見張っている。




「名前を呼ばれると自分だって分かるだろう?」




奏は難し過ぎたかと、例えをだした。




「ちょっと難しいよ。でも……名前か」




そう言うと、栄太は木の棒を拾ってきて、地面に何やらたくさん書き出した。


そこには子猫の名前の候補がいくつも挙げられていた。




「う〜んと……桜花(おうか)! うん、桜花がいい!」


「桜花か。うん、いい名だな」


「ニャ〜」




子猫にとってもどうやら満足のいくものだったらしい。


一声嬉しそうに鳴いた。



< 224 / 972 >

この作品をシェア

pagetop