誠-巡る時、幕末の鐘-
「名をつけたらどうだ?」
「名前?」
「あぁ。その猫に栄太が名をつければそこに縁ができる。名は呪だからな」
「呪?」
栄太は聞き慣れない言葉に首を傾げた。
「あぁ。名をつけ、それを呼ぶことにより相手を縛る」
なんとも物騒な物の言い方である。
子供相手にその説明はないだろう。
その証拠に、栄太は目を見張っている。
「名前を呼ばれると自分だって分かるだろう?」
奏は難し過ぎたかと、例えをだした。
「ちょっと難しいよ。でも……名前か」
そう言うと、栄太は木の棒を拾ってきて、地面に何やらたくさん書き出した。
そこには子猫の名前の候補がいくつも挙げられていた。
「う〜んと……桜花! うん、桜花がいい!」
「桜花か。うん、いい名だな」
「ニャ〜」
子猫にとってもどうやら満足のいくものだったらしい。
一声嬉しそうに鳴いた。