誠-巡る時、幕末の鐘-
「桜花という名を気に入ったようだな。良かったな、栄太」
「うん! あ、でもうちじゃ飼えないや……」
奏の言葉に一旦は喜んだものの、すぐに落ち込んでしまった。
爺と響に頼んでみるか……。
子猫一匹ぐらい飼っても大丈夫なはずだ。
「大丈夫。私が屯所とは別の所で預かる。いつでも会いに来れる所だから安心していい」
「本当? やったぁ〜!」
喜びのあまり飛び跳ねる栄太の頭をポンポンと叩き、桜花を抱かせた。
「わっ! ……うんしょ」
「さて。……栄太、桜花を連れてあそこの茂みまで走れ」
奏はすぐ近くに生えている背が高い茂みを指差した。
今日もある人物達があとをつけてきたのにとっくに気づいていた。