誠-巡る時、幕末の鐘-
「そこに平助達がいる。屯所までみんなと戻っておいて」
「奏お姉ちゃんは?」
栄太が一緒に行こうと握る手をやんわりと離し、しゃがんで目線を合わせた。
「私は来客がもうすぐここへ来る。招かれざる客だがな」
「招かれざる客?」
奏は茂みの方とは逆の方、桜の木の向こう側から視線を離さない。
「さぁ、早く! 桜花を頼んだぞ!」
「う、うん!」
奏の鬼気迫る顔に、栄太はようやく歩みを進めた。
藤堂達と屯所の方へ戻るのが視界の隅に映った。
「……早く……早く、屯所まで……」
一人、呟きながら刀を抜く奏の姿があった。