誠-巡る時、幕末の鐘-

桜は過去への道しるべ




栄太の姿と藤堂達の気配が消えた後、桜の向こうから男二人の声がした。




「……桜か。そういえばお前と会ったあの時も桜の所へ行こうとしていたな」


「……風戸、紫翠。鈴」




鬼一族の雷焔家と対をなす、風戸の現当主とその側近が姿を現した。




「小さいが落とす雷撃はさすが雷焔家の娘だな」


「外見にすっかり騙されたぜ。俺達としたことが」




彼らには幼い頃、過去に一度雷撃を与えたことがある。


雷焔家の雷を操る力は折り紙つき、しかも当主の娘である奏の雷撃はすさまじいものなのだ。




「……今さら何がしたい? 私の幸せ……平穏を壊しに来たのか?」




風戸には……恨みがある。


簡単には消えない深い長年の恨みが。




「幸せだと? 人のような低俗なものといるのがか?」


「何、だとっ!?」




その昔、当主夫妻を何者かに殺された雷焔の里は……






……風戸に滅ぼされた。



< 227 / 972 >

この作品をシェア

pagetop