誠-巡る時、幕末の鐘-
桜は過去への道しるべ
栄太の姿と藤堂達の気配が消えた後、桜の向こうから男二人の声がした。
「……桜か。そういえばお前と会ったあの時も桜の所へ行こうとしていたな」
「……風戸、紫翠。鈴」
鬼一族の雷焔家と対をなす、風戸の現当主とその側近が姿を現した。
「小さいが落とす雷撃はさすが雷焔家の娘だな」
「外見にすっかり騙されたぜ。俺達としたことが」
彼らには幼い頃、過去に一度雷撃を与えたことがある。
雷焔家の雷を操る力は折り紙つき、しかも当主の娘である奏の雷撃はすさまじいものなのだ。
「……今さら何がしたい? 私の幸せ……平穏を壊しに来たのか?」
風戸には……恨みがある。
簡単には消えない深い長年の恨みが。
「幸せだと? 人のような低俗なものといるのがか?」
「何、だとっ!?」
その昔、当主夫妻を何者かに殺された雷焔の里は……
……風戸に滅ぼされた。