誠-巡る時、幕末の鐘-
「奏様!」
「貴様……っ! 彼らは低俗なものなどではない!」
爺が来たのに目もくれず、奏は紫翠を睨み付けた。
「奏様……。貴様ら、奏様に何を!」
爺も雷焔家の側近。
主の激昂、そして目の前にいるのが風戸の当主と側近であるのを見て怒りを露にした。
「ただ自分の本来いるべき場所を教えてやろうとしただけだ」
紫翠はさも当然であると言わんばかりに、腕を組みながら答えた。
「本当はあんたもそう思ってるんじゃないのか?」
鈴もその言葉に重ねるように、瞳を爺に向けて言った。
「人間の中でなく、元老院の中でもなく。自分達の里をもう一度復興させたいって」
「そんなこと……!」
爺は一瞬黙りこんでしまった。