誠-巡る時、幕末の鐘-



――大広間




「あ、奏ちゃん!」


「奏! もう起きて大丈夫なのか!?」


「すっげー心配したんだぜ?」




奏達が大広間へ入ると、みんなは食事の最中だったが、箸をとめ、こちらに注目した。




「もう大丈夫。……ありがとう」




心配をかけたことは十分に分かっているので、奏も素直に礼を言った。




……人間は自分が見たくないもの、信じられないものから目を反らすらしい。


どうやら鬼も同じのようだ。


ある一角には目を向けないようにしていた。




「いいえ。元気になったようで良かったです」




山南が席を詰めてやりながら、笑顔で言った。




「今までずっと奏様の部屋に出たり入ったりを繰り返していたんですよ?」




響が信じられないことを口にし、奏は目を見開いた。


鬼である以上、人の気配にはいついかなる時も察知しなければならない。


それが出来なくなっているのだ。


栄太の時も土地神の社の中にいたとはいえ、察知することができずに栄太を人質に取られてしまった。


奏はこっそりと手を衣の袖の中で握りしめた。



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