誠-巡る時、幕末の鐘-
「もちろん、そこにいる月影殿のお許しがでたからですが」
爺も奏の様子に気付いてはいたものの、彼ら人間の前であまり言うものではないと思い、話をすりかえた。
爺も少しずつ彼らを認めてはいるのだ。
「爺、すまない。迷惑ばかりかけて」
「いいえ。迷惑など」
「旺輝殿も私が何度も休めと言っているのに聞かなかったんだから」
ミエが肩を竦め、チロリと爺を見た。
「今だってようやく食事をとらせてるんだから。ね? エリオル?」
爺から目線を外し、エリオルに同意を求めた。
「あぁ。骨が折れた」
首をコキコキと曲げながら、髪をかきあげた。
「月影殿、それは言ってはいけないことですよ」
爺が少しだけ顔を赤らめ、言わない約束だったのにとミエの口を塞いだ。
途端に隣とある一角から鋭い殺気が飛んだ。