誠-巡る時、幕末の鐘-



エリオルが丁寧、あるいは敬語になった時は決まって怒っている時だ。




「……そろそろ手を離してもらえないか?」


「……あ」




そう、今の今まで斎藤の手をミエは握り締めていた。


もうしっかりと。




ニッコリ




「奏……私……」


「ミエ様、すみません。私には無理です」


「やっぱりこういう時は……」


『鷹ーっ!』




二人で出せる限りの声を出して叫んだ。




「何だよ? 真っ昼間から元気だ……」




鷹がピシッと音をたてて固まった。


無理もない。


元老院三大魔王全員集合。


しかもエリオルは怒っている。


並みの妖なら、恐怖の余り逃げ出すだろう。


だが鷹はそれをしなかった。


いや、できなかった。


だって、鷹の肩には四つの刀が当てられていたから。



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