誠-巡る時、幕末の鐘-



「なんていうか……お前も色々と苦労してそうだな」




土方が珍しく眉を下げ、奏に(ねぎら)いの言葉をかけた。




「まだまだ、三大魔王の恐ろしさはこんなもんじゃないですよ。よくこの屯所壊れなかったなって思っているぐらいですから」




奏は本当に疲れた顔をしていた。




「奏〜。子猫連れてきましたよ!」




響が子猫を腕に抱いて道場に入ってきた。


お腹いっぱいになったのだろう、子猫は響の腕の中で寝ていた。




「さて……今日の私の後をつけてきた理由を聞こうか。新八さん、平助、左之さん?」


『……あ』




今の今まで理由を考えていなかった三人。


当然奏は容赦などするはずもなく……




「三人共……木刀持って。竹刀じゃないよ?」


「奏ちゃんが自分から相手してくれるなんて羨ましいなぁ〜」




沖田の言葉に三人が思うことはただ一つ。




(ならお前と変わってやるよ!)




「ほらほら。副長助勤の名が泣くよ?」




その後、道場から三つの悲鳴が聞こえた。


近藤に今日限り道場の立ち入りを禁止された隊士達は、断末魔の叫びのようだったと語る。



< 253 / 972 >

この作品をシェア

pagetop