誠-巡る時、幕末の鐘-
荒れる屯所
世界にまたとない甘味
――四月某日、音無邸
「今日は〜紫苑様からの〜差し入れのお菓子〜☆」
奏は主からの差し入れを嬉しそうに眺めていた。
畳の上に寝転がり、両足をパタパタとやっている。
「紫苑様というのは?」
響が台所からお茶を運んできて問いかけた。
「ローゼンクロイツ・天宮が一人。とてもお優しくて、料理がとってもお上手なの!」
奏は興奮気味に答えた。
瞳がキラキラと輝いている。
「今日はね、日頃お世話になってるからってみんなの分も作ってくださったんだ! 屯所に戻って食べよう!」
「はい!」
「そういえば爺は?」
奏は家の主の姿を探した。
爺って名前じゃないけど、小さい頃の癖で直せないなぁ。
今は爺と呼ぶといささか違うような気がする若い姿だ。
彼曰く、こちらが本当の姿らしい。
「父様ならば、着物の新調に行きました」
「そっか。なら置き手紙をして……っと。よしこれで大丈夫。行こうか」
「はい!」
二人は大量にあるお菓子を持ち、音無邸を後にした。