誠-巡る時、幕末の鐘-
「……」
『……あ、馬鹿』
奏は俯いており、長い髪のせいでどのような顔をしているか分からない。
が、明らかに先程までとは様子が違うことを土方達は悟った。
カチャリ
みんなが奏の様子に気を取られている時に、静かに刀を抜く男あり。
「総司! こらえろ! この状態でお前まで手におえなくなったら!」
「土方さん……」
「こらえろ!」
土方が止めるのがもう一歩遅かったら、沖田は斬りかかっていた。
沖田は何故止めるのかと、土方の方を睨んだ。
「ねぇ、ずっと待ってるんだけど? 一体いつその手を離すつもり? ……っていうかみんな何やってる?」
『……何って』
奏が髪をかきあげながら、片手を腰にあて、ぐるりと辺りを見回した。