誠-巡る時、幕末の鐘-
「こんな権力振りかざして下の奴らに威張るしかできない奴らはほっとけ! それよりおやつにしよう!」
(今それ言うか!)
みんなの考えが綺麗に一致した。
しかし、奏は空気を読まない発言を口にしているが、実際は激怒しているのが分かるので誰も口に出さない。
何故なら口調が……元に戻っているからである。
初めて会った頃の……毒舌が再び。
まだまだ軽いものではあるが。
「貴様ら……やれ」
「わっ! ……あ」
(やっちまったーっ!)
先程から発言していた男が、部下らしき他の男達に命令した。
その命令というのがその菓子を地面に落とせというもの。
それを“やれ”という一言で察した男達は実行に移したという訳だ。
昨日は久しぶりの雨の日で、地面は泥になっている場所が多くあった。
「……」
運悪くお菓子が落ちた場所はその泥の上で、それを奏はじっと見ていた。
土方達はこのお菓子が誰からもらった物か、奏の様子から察していたので、心の中で絶叫していた。