誠-巡る時、幕末の鐘-
奏はフラフラと男に近付き、次の瞬間には誰がとめる間もなく、男の脛(スネ)を勢いよく蹴っていた。
ただでさえ脛は弁慶の泣き所と言われる場所。
人間みな弱い。
それを人外の奏の脚力で勢いよく蹴ったもんだから、男はのたうち回っている。
(あーあ、こいつ死ぬな)
火を見るより明らかなことだった。
「ぐっ!!ぎっ!!た、助け…!!」
男は余りの痛さに部下に手を伸ばした。
『……』
が、肝心の部下は呆気にとられて茫然としている。
その時、屯所に足音もなく現れた男がいた。
「…爺か。今の聞いていたな?」
「はい、しかと。奏様、この者達の始末、私がしても?」
爺は殺気を体中から放出していた。
「駄目。私の獲物だ」
「はい」
そう言いつつも、爺も未だに目線を男から外そうとしない。
どうやら今回は本気でヤバいらしい。