誠-巡る時、幕末の鐘-



「…みなさん?私がここに入る時のことを覚えていらっしゃいますか?」




コクコク




触らぬ奏に祟りなし。


みんなそれを思い浮かべ、首を縦に振った。




「そうですか。良かった。今、大人しく眠るのと…以前目を開けておられた勇敢な方々のようになるのと…」




奏は間をおきニッコリと笑い、言葉を続けた。




「どちらがよろしい?」


『眠るのがいいです!!』




鮮やかな即答だった。


人間誰しも“馴れ”とは恐ろしいものである。


もう誰も奏を自分より後に入ってきた新入隊士だとは思っていない。




「そう。残念。…ではみなさん。しばしの間、いい夢を」




何が残念なのか…それは恐らく隊士達は知らない方が精神衛生上いいだろう。


奏が柏手を打つと隊士達は眠りの国へ旅立っていった。



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