誠-巡る時、幕末の鐘-
「まだだ」
藤堂達が呟いた言葉を聞き、奏は眉根を寄せた。
「貴様ら…こんなことでただで済むと思っているのか!?」
「みな切腹だぞ!!?」
男達が狼狽えながらもなんとか自尊心を守ろうと、辺りを指差しながら喚き散らした。
「うるさいな。……だんだん面倒になってきた」
「もうけりをつけられても」
奏は腕を組み、つまらなさそうに言った。
すると、爺が口の端を上げて笑った。
しかし、目は笑っていない。
笑うどころか、視線だけで殺しそうな目である。
「やっぱり駄目。…そうだな、確かあれは…あぁあったあった」
何を思い出したのか、奏は袖の中をあさくり、一冊の冊子を取り出した。
「奏。それ何だ?」
「これか?元老院第五課長の拷問の仕方を懇切丁寧に書いた冊子だ」
この答えに一人安堵した者がいる……土方だ。
どうやら発句集かと思ったようだ。
あからさまに安堵の溜め息をついていた。