誠-巡る時、幕末の鐘-
「これによると」
奏は冊子を爺に持たせ、刀を抜き、手近にいた男の腕を掴んで引き寄せた。
「な、何をする気だ!!離せ!!」
男はなおも威勢よく言っているが、無駄である。
足がガッタガタしている。
「なぁ知っているか?腕一本失っても死なないそうだ」
奏はニヤリと意地の悪い笑みを満面に浮かべた。
「ぎゃあぁぁぁぁ!!!やめろぉぉぉぉ!!!」
男の必死の抵抗もむなしく、腕は宣言通り切り落とされた。
男は余りのことに腕を押さえながら気絶してしまった。
(ひいっ!!)
土方達も普段はここまでやらない奏の本気具合を目の当たりにして、内心、男と一緒に叫んでいた。
「可哀相に。もう刀は持てないかもしれないな」
絶対にそう思っていない。
賭けたら絶対に勝てるような目で男を見下ろしていた。
「うわぁ。奏ちゃん、やるねぇ。本当に可哀想」
沖田…この男も全く思っていない。
声に明らかに愉(タノ)しみの響きが交ざっている。
愉しみ半分、奏への賞賛半分だ。