誠-巡る時、幕末の鐘-
「お、おい!!」
土方が奏の肩に手を伸ばそうとしたが、沖田に腕を掴まれた。
「駄目ですよ」
笑顔でそう言った。
「まだ序の口だ。…足一本失っても死なないそうだよ?」
次の獲物…失礼、男にスタスタと近寄り、止める間もなくズバッと。
「ぎゃあぉぉぉぉ!!!」
男はまさしく断末魔の叫びをあげた。
これがそうじゃないと言うならば、一体どう言うのが断末魔の叫びなのか。
奏は…耳を塞いでいた。
「お、おい。そろそろ…」
「やべえんじゃねぇ?」
原田、永倉が止めに入ろうと、一歩踏み出した時…。
「それにその冊子だって人間に適用されないのでは?」
山南がよくよく考え…なくても分かる当たり前のことを若干顔を引きつらせて言った。
『…あ』
皆の頭からは大事なことが抜けていたらしい。
奏も冊子の持ち主も人間ではない。
二人共、妖を束ねる元老院の役人だ。
つまり、尋問に使われるという冊子も対妖用に使われる訳で…。
人間に耐えられるはずもなければ、妖であっても精神を病むほどのものだ。