誠-巡る時、幕末の鐘-
「何故だ?」
「何故?それはこちらが聞きたい。元老院がお前達は里から出ることを禁じているはず」
紫翠はそれを鼻で笑い、自らの腰に手を当てた。
「そういえば、屋敷の老いぼれ共がそんなことを言っていたな」
自分の家に仕える老臣達を老いぼれ扱いとは…暴君もここまでくると何も言えなくなる。
だが、奏も自分の家の者のことではないので、気に止めなかった。
「分かったのならばさっさと去れ」
「風戸の当主と側近が元老院に捕えられたとなると、外聞が悪くなるんじゃないですか?」
紫翠は奏と爺の言葉に少なからず気分を害したようだ。
証拠に腰の刀に手がかかっている。