誠-巡る時、幕末の鐘-



「貴様…」




爺に向かって殺気を放ち始めたのを見て、鈴は深い溜め息をついた。




「紫翠、落ち着け。ここは退くぞ」


「…チッ」




紫翠も鈴に一目置いているからか、舌打ちしながらも、刀から手を離した。


どうやら鈴には逆らえないらしい。


やけにあっさりと退いた。




「じゃあ、俺達は帰る」




鈴はそれをちゃんと見て確認し、片手を振りながら奏に言った。




「貴様、覚えておけ」


「無理ですね。お決まりの台詞を使う方なんて」




定番中の定番の台詞を言った紫翠を、爺はすぐさま一蹴した。




「調子に乗るな」


「さっさと去れ」




いい加減にしろよ。


そろそろ本気なとこ見せなきゃ駄目か?




「じゃあ、また来る」




鈴はだんだんと目がすわってくる奏を見て、引き際を悟った。



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