誠-巡る時、幕末の鐘-
「今度会う時は必ず連れ帰る。別れを惜しんでおけ」
「……」
ま〜だ言ってやがる。
行く訳がない。
風戸の里なんかに。
……仇討ちならともかくな。
私が行くという確信は一体どこから湧いてくるんだか。
あんなのを当主に据えているなど、風戸の先も明るくはあるまい。
自ら手を下すまでもないようだな。
「奏様?」
「どうしたんだ?」
「さぁ?」
「……」
不穏なことを考えている奏に周りの声は聞こえちゃいない。
「き、消えた…」
一人、この展開についていけない男がいた。
いきなり紫翠達が消えたことに、顔を真っ青にしている。
目の前で信じられないことが起きたことに衝撃を隠せずにいた。