誠-巡る時、幕末の鐘-



「さて、これは何だろうか?はい、そこのあなた」


「お、俺?」




奏が指差したのは、永倉だった。




「そう。さぁ、何だ?」


「これは…上?文?は?」




達筆で、だがいささか震える字で上と書かれていた。


上とは、目上の人に対する手紙などの時に使われる。


それが二通。




「そうだな。ではどこの誰からだと思う?」


「フフン。どこかの町人やそこらの者からだろう?」


「あんたには聞いてない。新八さん、誰だと思う?」




男が体勢を立て直すべく言った言葉も、奏に黙らされてしまった。




「…それこそ天子様や、将軍様と知り合いでも驚かねぇな」




永倉が顎に手をあて、少し考えた後、冗談のように笑いながら言った。




「確かにな!!」


「奏、態度は同じようなもんだもんな?」




原田、藤堂も笑い声をあげた。



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