誠-巡る時、幕末の鐘-



しかし、奏の一言が彼らに衝撃を与えた。




「わぁ、すごい。新八さんたらさすがだな」


『…え?』




淡々と言ったが内容は変わらない。


みんな目が点になったり、見開いている。




「爺。読んで」




爺にその文二通を渡し、縁側に腰掛けた。




「分かりました」




爺も爺で、その貴重な文を、そこら辺の紙と同じような扱いで開いた。


若干丁寧さが見え隠れしたのも、これが奏の持ち物だという心理が働いただけだろう。




「…この度はこちらにおいで頂き誠にありがたく存じます。


急なご訪問ということでおもてなしをささやかにしかできず申し訳なく思っております。


江戸にご滞在される場合は是非おいで下さい。
            
           徳川家茂」




「久々のご訪問真にありがとうございます。


私の代においで頂きしこと真に光栄の極みでございます。


元老院の方々にもよろしくお伝え下さい。
            
            統仁」




二通をスラスラっと読み、奏に返した。


奏は扇子を取り出して開いた。



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