誠-巡る時、幕末の鐘-



「爺。この者は何と言っていた?」


「はい。確か「奏〜?」




爺が答えようとした時、勝手場の方から響が走ってきた。




「お客様の分のお茶葉が足りないので買ってきますね。…あら?さっきまで五人じゃ?」




響はキョトンとして、辺りを見回した。


いなくなった二人…紫翠達を探している。




「あぁ。二人帰らせた」




奏はそう言った後、ふと動きを止めた。


そして何かを考えこみ始めた。


響の方を見て、男の方を見て、最後に土方の方を見る。


そしてニヤリと笑った。




「ねぇ、響?」


「何ですか?」




響にしなだれかかるように手を回した。


響はキョトンとしている。




「お願いがあるんだ。聞いてくれる?」


「奏がお願いだなんて珍しいですね!!何ですか!?」




奏が自分の頼みを聞いてくれることはあっても、逆はほとんどない。


なので、響は目を輝かせた。


奏はクスリと笑った。



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