誠-巡る時、幕末の鐘-
響の悲鳴が聞こえた瞬間、星鈴にとって鷹のことはもはや眼中になかった。
彼に背を向け、響の元へと脇目も振らず駆け出した。
「あ、おいっ! ……お嬢、あいつ、そろそろあんたから巣立っていきそうだぜ? あいつが主以外のことで必死になるなんてな」
(あいつは――だからな。
――は誇り高い一族。
主と定めた者以外には、膝を折ることも頭を垂れることもない。
王族だろうがなんだろうが、絶対にだ。
地獄の主である閻魔王や元老院長にでさえというのだから大したものだろ。
まぁ、あいつがお嬢を大切にしてるのと同じくらい、お嬢もあいつを大切にしてるのは長年見てれば分かる。
……それにしても、音無、か。
どっかで聞いた名字なんだけどな。
つい最近か?)
鷹は頭をひねってしばらく考えたが、結局思い出すことはできなかった。