誠-巡る時、幕末の鐘-
「そ、そうか。それは良かった」
「良くありませんね」
近藤が安心したように笑うと、逆に爺は気分を害したように吐き捨てた。
「てめぇ…まだ奏を」
「あなた達こそ」
土方が爺を睨み付けた。
爺も負けじと睨み返す。
二人の間には見えない火花が散っていた。
「そこ、やめなさい。どうして土方さんと爺は折り合いが悪いんですかね」
『……』
奏に仲裁に入られ、お互いをもう一度睨んだ後、そっぽを向いた。
ガキか?
大の大人が……。
つまらんことで喧嘩して恥ずかしい。
「…そしてあなたはどさくさに紛れてこいつを殺そうとしない」
奏の言葉にみんな首を傾げた。
見ると、沖田がまた…刀に手をかけていたのだ。
しかも先程まで立っていた位置と明らかに違う。