誠-巡る時、幕末の鐘-



「さぁ、楽しい学問の時間の始まりだ。…今回自分がしたことを言ってみろ」


「それは…」




奏は扇子で口元を隠し、中谷の言葉を待った。


だが口をパクパクとさせるだけで一向に喋ろうとしない。




「覚えていない…か?自分より下の立場の者しかいないと浅はかにも思って」




奏は扇子をパチンと閉じ、立ち上がった。




「ならば教えてやろう。…爺」




口の端を緩やかに上げ、爺を呼んだ。




「はい。まず、局長を侮辱し、上に立つものとして情けないと」


「はい、ここで待った。まず、局長を侮辱した。ここが頂けない。そうだろ?沖田さん」




首だけ後ろに立つ沖田の方を振り向いた。




「そうだね」




沖田が腕を組みながら、笑顔で言う。


笑顔だからこそなおのこと恐い。


いっそ土方のように、眉間にシワをたくさん刻ませて怒鳴る方がいいとさえ思えてくる。




いい性格してるよ、本当。




人のことを言うべきでないのが奏である。



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