誠-巡る時、幕末の鐘-
「まぁ、その件は後にして。自分でけりつけろ」
「本当に?嬉しいなぁ」
思いがけない言葉に、沖田の顔がより一層笑みを深くした。
「それと上に立つ者として情けない?あぁ、残念だ。私は今ここに身を置いている者」
一旦言葉を切り、中谷を一瞥した後、目を瞑り、手を額にあてた。
「ならば私が今、上として見るべきは局長と…帝と将軍だな」
顔は実に悲壮な顔つきをしている。
「近藤さん、私は悲しいよ。そんな風に近藤さんに思われていたなんて。二人も文と本心は違うんだろうか」
「……」
奏が首を振りながら言う言葉に、中谷は即座に墓穴を堀ったと気付いた。
そして、奏はあぁ、と泣き真似を始めた。
「私はそんな事ないぞ!!奏君は私達の自慢の仲間だ!!」
近藤は唾を飛ばさんばかりに勢いよく言った。
慌てているのか、身振り手振りが激しい。
奏の泣き真似に気付いていないのだろう。
素直すぎる性格も、時には仇となることを誰か教えた方がいいのではないか。
奏は逆に心配になった。