誠-巡る時、幕末の鐘-



「ありがとうございます。ですが…二人の意見も聞かなければ安心できません」




もうこれ位でいいだろう、と泣き真似を止め、次は心配げな表情を作った。


あくまでも作ったのだ。


奏の心には、一片の心配も何もない。




「爺、彼が言ったことを言って考えを聞いてきて。帝の方でいいから」


「分かりました。すぐ戻ります」


「…っ!!」




爺が素早く屯所を出ようとしたその時、中谷がガバッと顔を上げた。


その顔には、恐怖と後悔、そして絶望の色が濃く出ていた。




『……』




さすがのことに、誰もが絶句してしまい、何も言えなかった。


どこの世界に、他人に言われたからと国の一番偉い奴に会いに行けと言う奴がいるのか。


答えは出た。




『……奏だ』



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