誠-巡る時、幕末の鐘-



「あ、あ、あぁぁぁっ!!」




中谷は顔を両手で覆い、まるでこの世の終わりのような声を出している。


実際、帝の返答次第では本当に自分のこの世が終わるので間違いではないが。




「さて次。爺が行ってしまったので…一君どうぞ!!」


「確か…部下を使い、奏が持ってきた菓子を泥塗れにしたな」




奏に指名され、斎藤は腕を組みながら答えた。


視線の先には、見るも無惨な菓子だったものが置いてある。




「そうなんです!!あれ、私のお仕えしている家の一番料理がお上手な方のお手製だったんですよねぇ」




奏が指を唇にあて、食べたかったなぁ、ともらす。




「わざわざ私達のために作って頂いて。それをまぁ、こんなにしちゃって」




いくら手ではらっても、泥の中に落ちたものは食べられる物ではない。


下手するとお腹を壊しかねない。



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