誠-巡る時、幕末の鐘-
「これを特上の酒と一緒に貴船の祭神様にも献上しに行こうと思っていたのに」
貴船のある京の北の方を見て、深い深い溜め息をつく。
「これがなくなったとお知りになったら…あぁ、可哀相に。…あなた方が」
『……』
同情などこれっぽっちも思ってないことが分かる視線を浴びせ、ニコリと笑った。
土方達も視線を中谷からずらし、とばっちりが来ないようにしている。
我が身の安全第一だ。
「や、やめろ」
「さて、次は?」
中谷の震える声を華麗に無視をして、斎藤に続きを促した。
「…奏の…星鈴という名をつけた主達と両親を侮辱した…な」
斎藤もこの時ばかりは言葉を途切れ途切れにせざるを得なかった。
いつもは淡々と冷静に言葉を発する斎藤にしては非常に珍しいことだ。