誠-巡る時、幕末の鐘-



「ただ今戻りました。これを」


「読んで」




爺が足早に奏の元に近寄り、真新しい文を差し出した。


奏はそれを開き、流し読むと爺に再び返し、みんなに聞かせた。




「この度の事、真にいかんな事と存じます。そのような事一切心にありません」




爺が文を開け、すらすらと朗読した。




「良かった」




男の方を見て、扇子を開いた。




「………面倒くさ。あの人のやり方。なんかこうジワジワと蛇のように執念深〜く首を締めるみたいなの」


『確かに』




ジワジワと攻めるのは彼らも好きではない。


どちらかと言うと猪突猛進型だ。


だから、見ていて焦れったくも思っていたのだ。



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