誠-巡る時、幕末の鐘-
「面倒臭くなった時はこれ」
『?』
自分達は見慣れている。
毎日見ているものだ。
扱ってもいる。
しかし、この場で出てくるのが不思議なものだった。
それは……木刀だった。
「?じゃなくて、試合しましょ、し・あ・い」
「し、試合?」
「そう。お前がもし私か沖田さんに勝てたら今回の事は水に流そう」
分かりやすい、実に。
だがまず無理だろう。
「もし…負けたらどうするんだ?」
探るように中谷は奏を見た。
「そうだな。その時また考える」
「じゃあ、道場へ行きましょうか」
沖田がやっと出番が来たとご機嫌だ。
『……』
今まで奏と沖田が共闘した時にはろくなことになっていない。
土方の発句集のことを考えれば明らかだ。
「本気でやるのか?」
「絶対無理だろ」
「あぁ。あの二人相手にすぐのされるに決まってる」
みんな言いたい放題、道場に向かいつつ言っていた。