誠-巡る時、幕末の鐘-



 一方、星鈴が店に戻ると、響を三人の浪人風の男が取り囲んでいた。



「離して下さい!」


「なぁ、暇なんだろ?」


「ちょっとくらい俺達の相手してくれてもいいじゃねぇか」


「やめて!」



 その中の一人が響の腕を掴み、連れていこうとしている。


 今、響は女の格好に戻っていた。


 星鈴がそうするように言ったのだ。


 自分が付いているから大丈夫だろうと(たか)をくくっていた。


 それに、慣れない格好をさせ続けるのも可哀相だと思ったのだ。


 それが完全に裏目にでてしまった。



「……やめてって言ってるだろ? 手、離せば?」


(出来るだけ穏便にことをすませよう。人間相手は厄介だ)



 その言葉で星鈴が戻ってきたことを知り、響は目を輝かせた。



「星鈴!」


「けっ! 女みてぇなお綺麗な顔の奴だと思ったら、名前まで女みてぇな弱っちぃ……グホォッ!」



 男が腹を抱えて地面にうずくまった。


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